第三 大いなる章
〈七、セーラ〉
セーラ・バラモンは仲間とともに師のもとで出家して、完全な戒律を受けた。
ときに、結髪の行者ケーニヤは、その夜が過ぎてから、自分の庵で味のよい硬軟の食物を用意させて、師に時の来たことを告げて、「ゴータマ(ブッダ)さま。時間です。食事の用意ができました」と言った。そこで師は午前中に内衣を着け、重衣をきて、鉢を手にとって、結髪の行者ケーニヤの庵に赴いた。そうして、修行僧のつどいとともに、あらかじめ設けられた席についた。それから結髪の行者ケーニヤは、ブッダを初め修行僧らに、手ずから、味のよい硬軟の食物を給仕して、満足させ、あくまでもてなした。そこで結髪の行者ケーニヤは、師が食事を終り鉢から手を離したときに、みずから一つの低い座を占めて、傍らに坐した。そうして結髪の行者ケーニヤに、師は次の詩を以て、喜びの意を表した。──568 火への供養は祭祀のうちで最上のものである。サーヴィトリー〔讃歌〕はヴェーダの詩句のうちで最上のものである。王は人間のうちでは最上の者である。大洋は、諸河川のうちで最上のものである。

この詩のうちの諸句は、諸仏典(Mahāvagga Ⅵ,35,8;Mahāvastu Ⅲ,246,7ff.)、ジャイナ教聖典(Utt.ⅩⅩⅤ,16)、『バガヴァッド・ギーター』(第一〇編第二三詩以下)に対応文が存する。 火への供養――バラモン教では、神聖な火を燃やして、その中に穀類やバターなどを投じて、神に献ずる。 サーヴィトリー――第四五七詩に対する註記参照。
サーヴィトリー……は最上のものである――Bh G.X,35;Sn.457 参照。 王は人間のうちでは最上の者である――Bh G.X,27 参照。 大洋――sāgara.漢訳仏典では「海」と訳されるが、インドでは海洋のみならず、大河、大湖水をもこの語で呼んでいる。第七二〇詩参照。 大洋は……最上のものである――Bh G.X,24 参照。 以上註記より引用しました。